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スティーヴン・スピルバーグ 未知と驚異の創造主
スティーヴン・スピルバーグ 未知と驚異の創造主
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『スティーヴン・スピルバーグ 未知と驚異の創造主』
イアン・ネイサン=著
中山宥=訳
発売日:2025年10月25日
本体価格:3,200円+税
判型:B5判変形・並製
頁数:248頁
ISBN:978-4-8459-2413-4
「いつか大人になっても、わたしはやはり映画監督になりたい」
──スティーヴン・スピルバーグ
いま、世界で最も名を知られる映画作家は、いかにして〈ハリウッドの理想〉となったのか。
幼少期の目覚めから『フェイブルマンズ』までの長い旅路を探る。
スティーヴン・スピルバーグは、映画史上もっとも名を知られた監督であり、映画というメディアそのものを定義してきた存在である。彼は「芸術」と「商業」を見事に融合させ、ハリウッドの理想を体現してきた。
彼の物語には、数え切れないほどの要素がある。作品に伝記的な色合いを与えた郊外での生い立ち。ジョージ・ルーカスをはじめとする〈ムービー・ブラッツ〉の仲間たち、作曲家ジョン・ウィリアムズ、プロデューサーのキャスリーン・ケネディ、編集のマイケル・カーン、俳優リチャード・ドレイファス、ハリソン・フォード、トム・ハンクス、そして興行界の大物にして恩師シド・シャインバーグらとの協働。
製作の過程から生まれた数々の神話――悪夢のような撮影と手強いサメに翻弄された『ジョーズ』、奇妙な野心に満ちた『未知との遭遇』、挫折に終わった『1941』、そしてインディ・ジョーンズの誕生。さらに『ジュラシック・パーク』でのブロックバスターの再発明、『シンドラーのリスト』で人類史の暗黒に挑み、『プライベート・ライアン』でジャンルを刷新した。そして『マイノリティ・リポート』『ミュンヘン』『リンカーン』においては、力強く、予測不能で、挑戦的なスピルバーグ像が浮かび上がる。
その輝かしいキャリアを正しく理解するためには、神格化された「ブランド」としての姿から距離を置き、彼自身が生み出したヒーローたちと同じく“人間的な存在”としても見つめ直す必要がある。神格化され、誰も手の届かない地位にありながらも、彼の映画は常に両親の承認を求め続けていた。それはまた、同業者からの承認を渇望する姿でもあった。スピルバーグが運命のオスカー像を手にするまでには、あまりにも長い歳月を要したのである。
本書は、スピルバーグという作家を、芸術家として、映画監督として、そして一人の人間として再発見する試みである。映画史上もっとも有名な監督の人生と作品を徹底的に読み解く本格評伝。
スピルバーグの映画を定義し、評価し、文脈化し、理解するのは容易ではない。シンプルなのは、うわべだけだ。視覚的な魅力、観客や批評家の称賛、作品を受け入れることで得られる純粋な喜びなどを取り払って、映画制作の核心に迫る必要がある。インスピレーションの源泉や、彼の体内で脈打つ「古きハリウッド」の伝統を探らなければならない。必然的に、代表的なシーンの数々を探究し、整理・分類していくことになる。『未知との遭遇』のクライマックスにおけるマザーシップの着陸、『E.T.』で空へ舞い上がる自転車、『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』で冒険好きの考古学者を追いかける巨大な岩、『シンドラーのリスト』でのユダヤ人居住区の一掃、『プライベート・ライアン』でのD-デイ上陸……。挙げていくと、きりがない。突き詰めて言うなら、スピルバーグの天才性は、彼の象徴的なショットに宿っている。みずから慎重に選び取った映画制作の手法の表われだからだ。
わたしの前に立ちはだかる難題は、インディ・ジョーンズのシリーズに登場する罠だらけの墓のように危険に満ちていた。スピルバーグをあらたな視点から見直さなければならない。
だからこそ、わたしは「やります」とこたえ、思い切って飛び込んだ……。
(本書「イントロダクション」より)
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